ケニアと日本をつなぐサイザル物語

~ある女性企業家の視点~

織りトレーニング開始!みんなの「紫色の犬」が生まれた日

工房には時々、織子さんの子供たちが学校の帰りに遊びにやってきます。

 

6歳になる織子のナンシーの娘さんは

毎日学校帰りに来てお母さんの仕事終わりを待ちます。

普段は外で遊びまわっていますが、

雨の日や元気のない日は工房で座っていることがあるので

そんなときのために塗り絵とクレパスを用意しています。

 

先日彼女の塗り絵を見ていて少し面白いことを発見しました。

塗り絵のとき、どの絵も「正しい色」を大人たちに聞くのです。

 

「キリンって何色で塗ればいい?」「ここは茶色、ここは黄色」

「ライオンは?」「オレンジと黄色」

「おうちは?」「赤い屋根に白い壁」

 

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子供の独創性を養うならば、象がピンクだっていいじゃないか・・・

と思う一方、お母さんたちは正解を教えたいという気持ちがあり

また子供もこうして質問することで構ってもらえるのが嬉しいのかもしれない

と考え、何も言わずに観察していました。

 

すると、途中で1ページだけ、女の子が誰にも聞かずに黙々と塗りだしました。

どんな絵だろう、とさりげなく覗いてみると、そこには紫色の犬が。

犬が最も身近な存在だったので、「正しい色」を聞かなくても良かったのか、

急に自我が芽生えたのか。

その紫色の犬だけ、線をはみ出して元気よく塗られていました。

 

この一コマを、織子さん達との関わりで思い出すことになります。

 

話は変わって、今週の木曜日から今回の訪問の一番の目的である織りトレーニングが始まりました。

現在、工房では4人の女性が織りを担当していますが、

彼女たちが近い将来、自分たちのチームを持つリーダーとなるためには

まだまだ学ぶことがたくさんあります。

そして、サイザル織り自体、まだまだ可能性をたくさん秘めています。

 

織り道具の準備や教材の準備に1週間かけて

水曜日までにそれまでの仕事を終わらせてもらい

木曜日の朝、授業が始まりました。

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 (用意した教材。練習問題を含め6ページあります)

 

準備は万端でしたが、水曜の夜はドキドキして眠れませんでした。

変化を嫌う彼女たちが、内容を受け入れてくれるだろうか。

計算問題が多すぎて嫌がらないだろうか。

 

現時点でトレーニングは半分終えたところですが、

結論から言うと大成功です!

 

頭を悩ませる問題もみんなで話し合いながら解決し、

私が教えることすべてに積極的に取り組んでくれて

彼女たちのやる気と本気を改めて見た気がしました。

 

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(トレーニング開始!4人で練習問題を解いてます)

 

トレーニングやその準備についてだけでも何個もブログ記事が書けそうですが(笑)

今日は、その中でも最も感激した瞬間を共有します。

 

先ほどの塗り絵の話に戻りますが、

織子さん達と関わっていると、塗り絵の少女と同じ現象が見られます。

私が決めた色やデザインで好き嫌いは教えてくれるけれど

基本的に自分たちからの提案は絶対にしない。

「どっちの色の組み合わせの方が良いと思う?」と聞いても

「ひかるの方が日本のお客さんの好みを知っているから」と

意見すらもらえない。

 

私の夢見る織り工房は、社員が自らデザインを提案してくるような工房。

とは言っても、まだまだ時間はかかるかな・・・と思っていました。

 

さて、トレーニングの一環で織り機の組み立て方を少し変えて

今まで2本しか使っていなかった足踏み(ペダル)を

4本、つなげてみました。

 

簡単に書くと、2本ではシンプルなチェック柄しか織れなかったのが

4本つなげることで、斜め線やダイヤ柄が織れるようになります。

 

結びを終えた後、糸を数本通して、テスト織りを行います。

この時、当初予定していなかったのですが、

遊び心で4本のペダルを使った斜め線の織りを見せてあげました。

 

斜め線を見たときの織子さん達の表情は、一生忘れられないかもしれません。

新しい発見をしたようにぱーっと明るくなって

「わぁ・・・」とため息のような声が出ます。

 

「やってみたい!」「どのペダルを踏めばいいの?」

と席を奪うように私は織り機から追い出されました。

 

そして、彼女たちに織りを教えてからの2年で初めて

「ひかる、この色で試してみてもいい?」

と聞かれました。

 

10分で終わらせる予定だったテスト織りを

急遽1時間に延ばし、ひたすら織りで遊んでもらいました。

色で遊ぶ人、ペダルの踏み順を変えてみる人。

イデアが止まりません。

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(ナンシーのテスト織りは緑と白の組み合わせ)

 

今まで蓄積してきた経験を基に、

彼女たちの「紫色の犬」が誕生した瞬間。

 

私の夢の形が、ほんの少し実現した瞬間。

 

どうか、この瞬間がこれからもたくさん、たくさんありますように。